【書籍レビュー】ケーキの切れない非行少年たち/宮口幸治【書評】

こんにちは。

神矢翔( @kamiya_S25)です。
 
今日の本はこれ。
ケーキの切れない非行少年たち/宮口幸治
 
ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

 

 

児童精神科医である筆者が日々現場で非行少年たちと向き合い、「境界知能」の少年たちにどう対応すれば良いのかを書いた本。

 

犯罪に手を染める少年が何らかの障害を抱えているケースが多いというのは、聞いたことがある人も多いだろう。

データ的には曖昧ではあるが、専門家である筆者の経験にも裏打ちされているとおり、それは事実なのだとは思う。

それは事実だとしたうえで、この本では犯罪の原因を障害のみに見出しているような印象を受ける。

障害を抱えた少年全員が犯罪行為を行うはずもないし、もちろん筆者もそんなことは思っていないだろう。

しかし、そう読めるような書き方ではある。

 

個人的に疑問に思ったのが、「発達障害や知的障害をもった子どもたち」という記述について。

発達障害と知的障害は並べてよい概念なのだろうか。

「認知機能」に問題があるという点では共通しているにしても。

 

「認知機能」に問題がある非行少年に通り一遍の矯正を行っても何も意味がなくて、その少年の特性に合わせたものでないといけない、ということに対しては何も反論はないだろう。

そして、そのためには何をすれば良いのかというのが、実地経験に基づいて記述されている。

知らない世界を覗けるので、非常に興味深い。

 

障害をもった少年が犯罪に走ってしまう理由に、障害を周りに「気づかれない」という実態がある。

「境界知能」の子どもは中々判別が難しいし、障害をもちながらも真面目に頑張っている子どもが大多数であるところに、問題行動を起こす少年にどこまで手をかけるのかは難しいところである。

しかし、犯罪行為までいってしまえば本来であれば不要だった多額の税金が、犯罪者に対して投下されるわけなので、学校教育の中でそういう少年を拾い上げて適切に対処していくことは国民全体の利益になることだと思う。

 

「ケーキの切れない非行少年たち」というタイトルだが、これはタイトルの勝利と言えるものだと思う。

パワーがあるワードで、「認知機能」に問題があることも示せている。

 

「おわりに」でも記載してあったが、今の日本は「発達障害」に意識が向きすぎており、「知的障害」が置き去りにされている感じはする。

どこの基準を置くかで判断が変わってくる「境界知能」についてはなおさらだ。

ネットでも発達障害に関する話が、いつもどこかで出てきている印象だ。

発達障害」はしばしば当事者が出てくるという点で、「知的障害」に対して強いのかもしれない。

これだけ「発達障害」が身近になってきているので、「知的障害」の理解もさらに進めば良いと思う。 

 

 

では、また。