【書籍レビュー】ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活/國友公司【書評】

こんにちは。
神矢翔( @kamiya_S25)です。
 
自分としては結構好きなジャンルであるアングラ系ノンフィクション。
出版元の彩図社は『ルポ 川崎』や『売春島 「最後の桃源郷渡鹿野島ルポ』なども出版している出版社で、個人的には好きな出版社です。
関係ないけど、こういう小さめの出版社の編集者ってメチャクチャ仕事が大変そう。
上手く仕事が自分にハマれば、楽しそうだけど。
 
本書は、大学を卒業したばかりのフリーライターである筆者が、78日間西成で生活して書き上げたルポタージュ。
78日間というと、なかなか長期間の滞在だと思う。
読んでみた率直な感想としては、かなり楽しく読めた。
 
今までこういう本を読んできた経験からすると、アングラ系の本って割と当事者に寄り添って愛を感じる雰囲気の本が多いような気がするんだけど、この本にそれはほとんど感じられない。
内部に潜入しているけど、西成の人をバカにした表現も多くて外からor上から目線といった印象。
自分も同じ底辺労働者であるという描写をしていても、好きで来ているからお前たちとは違うという気持ちが透けて見える。
自分がこの手の本を読む動機は、問題として考えたいとか高尚な気持ちからではなく、純粋な好奇心が大きい。
そんな自分だから楽しんで読めたのかもしれない。
内容を世間一般が想像する「西成」に寄せていっている感じもある。
とにかく見世物気分で読みたいと思っている人には楽しめると思います。
内部に潜入してこの問題を世間に伝えていきたいみたいな熱いジャーナリスト魂を見たいという人にはたぶん合わない。
これは好みの問題だからどちらが良いというものでもないと思うけど、これはあくまでもエンターテインメント。
 
この本を読んで初めて知ったことは、日雇い労働に「現金型」と「契約型」っていうシステムがあるということ。
それぞれの世界には色んなシステムがあって、それを知ることができるっていうのは良いね。
 
西成に来て日雇い労働に従事しているだけなら、それはそれで町の個性だし何も問題ないんだけど、問題は犯罪と生活保護でしょう。
この町の生活保護の需給率の高さは何なのか。
日雇い労働しかしてこなくていよいよ身体が動かなくなってきて生活保護に転落したっていう人もいると思う。
これも将来のことを全然考えてこなかったという意味では問題はある。
でも、これよりも更に悪い、不正受給もかなりの数いるに違いない。
なぜ何も努力しないで生活保護受給者の立場にあぐらをかいている人たちを、税金で養い続けなければならないのか。
不正受給者が生活保護を受給していなかったらどうせ犯罪を犯すだけなので、全国に点在しているよりは西成にまとまっていたほうがまだマシかもしれない。
ある意味では西成が全国の不正受給者たちを引き受けてくれて世の中が平和になっている。
でもそれで良いわけがない。
 
こういう問題を少しは考えたりもするんだけど、エンタメとして楽しく読んだ方が良いと思う。
長期間滞在していただけあって、西成の実情みたいなところはかなり充実しているので、興味がある人は読んでみると良いのではと思います。
あと、YouTubeでも西成に泊まってみたって動画は結構あるからそれも観てみると良いと思います。

 

ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活

ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活